2025年03月21日に福井大学特命教授の寺澤秀一先生にお越しいただき、症例検討会を行いました。研修医が症例を2例提示しました。
1症例目は腹痛を主訴に救急外来をWalk inで受診した80代女性の症例でした。この患者は排便(?)を認めていたものの、腸蠕動音の軽度低下から腸閉塞を疑い画像検査を進めた結果、やはり腸閉塞を認めたという症例でした。便を認めていても腸閉塞を否定してはいけないと改めて感じることができた症例でした。寺澤先生からは、便意を認めた後の便は「排便」としてよいが、腹痛があり便意はないが便を出したら楽になると思い無理やり便を出した場合には「排便」とはとらない、と教えていただきました。腹痛の患者が受診した場合、排便の有無や便の性状等は聴取しますが、便意に着目した問診は今までできていなかったので、実施していきたいと思いました。その他にも腹痛で見逃してはいけない疾患や腹痛に対してのX線の活用の仕方など明日から救急外来で活かせる知識を沢山教えていただきました。
2症例目は繰り返す転倒と軽度の意識障害を主訴に救急搬送された80代男性の症例でした。バイタルは血圧がやや低値以外は安定、身体診察では明らかな異常所見はなし。血液検査では軽度の低Na血症と脱水を認め、頭部と胸腹部の単純CTでは特に異常所見を認めませんでした。結果としてこの症例は入院後に下垂体卒中が判明しました。この症例は私自身がファーストタッチしたものでした。私は救急外来ではそこまで考えることができていなかったのですが、軽度のBUN上昇やNa低下、K上昇や、血糖低値などを認めており、下垂体機能低下を疑うべき要素はちりばめられていた症例でした。寺澤先生からは低Naをみたら水中毒(とくに統合失調症の患者)、副腎不全、甲状腺機能低下、下垂体機能低下は鑑別に入れるようにと教えていただきました。電解質異常に対してはつい補正のことばかり考えてしまいがちですが、原因は何なのかをもっと考えることができるようにしたいと思いました。
寺澤先生、今回も非常におもしろく、学びとなるレクチャーをありがとうございました。

